日経平均は反発。109.86円高の23676.90円(出来高概算4億8001万株)で前場の取引を終えている。

 前日20日の米国株式相場は反発。ダウ平均は113.37ドル高の28308.79ドル、ナスダックは37.61ポイント高の11516.49ポイントで取引を終了した。9月住宅着工件数の増加を好感し寄り付き後上昇した。民主党のペロシ下院議長が追加経済対策を巡りトランプ政権と大統領選挙前の合意の期限である本日中の合意に楽観的な見解を示すと上げ幅を拡大した。

 米国株高を受けた今日の東京株式市場は買いが先行した。日本でも米追加経済対策合意への期待感に加え、新型コロナワクチン開発に関するポジティブな報道が好感された。一方、欧米での新型コロナ感染拡大への懸念が継続していることに加え、日本時間の今日の日中に米追加経済対策の協議内容に関する情報が伝えられる可能性があることから、寄り後の買い一巡後は積極的な買いを手控える向きもあり、日経平均は方向感の定まらない展開となった。

 個別では、21年3月期業績予想と配当予想を上方修正したソフトクリエ<3371>、21年6月期利益予想を上方修正したGenky DrugStores<9267>が10%を超す大幅高となったほか、21年3月期上半期(中間期)業績見込みを上方修正した宝ホールディングス<2531>、タカラバイオ<4974>、ローム<6963>、EV関連分野の回復期待で国内証券が目標株価を引き上げた日本製鋼所<5631>、21年3月期上半期(中間期)利益見込みを上方修正したノジマ<7419>、EC成長局面入りへの期待で国内証券が目標株価を引き上げたビックカメラ<3048>、WTI原油先物の反発が手掛かりとなった石油資源開発
<1662>が上げた。

 一方、未定としていた21年3月期連結営業利益が前期比38.6%減予想と発表したアルインコ<5933>が下げた。また、ニトリHD<9843>が島忠<8184>の買収を検討しているとの報道を受け、島忠が13%近い大幅高となる一方、DCM<3050>が下げ、ニトリHDが軟調だった。

 セクターでは、鉱業、海運業、鉄鋼、非鉄金属、輸送用機器などが値上がり率上位。一方、精密機器が値下がりした。東証1部の値上がり銘柄は全体の77%、対して値下がり銘柄は18%となっている。

 一昨日19日の当欄で、新型コロナのワクチンや治療薬の開発・普及は感染を収束させ、景気回復への「期待」が「現実」のものとなり「株価=景気/金利」の右辺・分子の景気を押し上げると書いた。一方、FRBは少なくとも2023年までゼロ金利政策を維持する方針を示しているため、分母の金利は小さいままで、分子が大きくなり、株価は上昇を速める。世の中で「バブルだ」「株価上昇は十分説明がつく」などと議論が喧しくなる中、株価はとめどなく上昇するかもしれない。しかし、その後に来るものは。

 1980年代、日本はバブル景気に沸いた。株価は糸が切れた凧のように上昇した。しかし1990年に入ると市場の様相は一変。株価は奈落の底に落ちていくことになる。後の検証では、この時のバブルの発生や崩壊は、その多くの部分が金融政策の遅れによってもたらされた、とするものが多い。バブル景気を放置し金融を引き締めず、バブルが爛熟したのちに一気にバブルつぶしに走り、バブルは弾けた。そして日本は今日に至るまで長い長い「失われた時代」を歩むことになる。

 今回、世界経済が当時の日本と同じ道を辿らないために最も重要なことは、金融当局のハンドリングだろう。新型コロナのワクチンや治療薬の開発・普及と同時にアフターコロナの世の中の幕が開く。そこでは人々の歓喜の中でバブルが産声をあげている。金融当局のハンドリングが後手に回れば、そこは歓喜に満ちた世の中の幕開けでなく、世界規模での「失われた時代」の入り口となるかもしれない。時代は時に、多くの人の思惑とは別の道を辿るものだ。少し先の話ではあるが心しておきたい。この件についてはもう少し考えてみたいが、紙面の都合で次の機会に回す。

 さて、後場の東京株式市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。前場は日経平均が上げ幅を縮めた場面では押し目買いも指摘され、物色意欲は強いと見られる。一方、米追加経済対策の協議内容に関する情報待ちという状況は継続しそうで、上値追いには慎重なムードとなりそうだ。
(小山 眞一)


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情報提供元: FISCO
記事名:「 日経平均は反発、米追加経済対策の協議結果待ちで方向感定まらず