非営利シンクタンク言論NPO(東京都中央区、代表:工藤泰志)と、中国国際伝播集団(総裁:杜 占元)は、2022年11月30日、「第18回 東京-北京フォーラム」の開催に先立ち、「第18回日中共同世論調査」の結果を公表いたしました。今回の調査は、今年の7月下旬から9月下旬旬にかけて実施しました。
今回の世論調査は不安定な世界やアジアの緊張が高まる中、これまでの調査で設問に入れることで合意ができなかった台湾海峡の問題やウクライナへのロシア侵略の是非についても今回は採用となり、中国国民が、「台湾海峡」と「ウクライナ」で回答する、世界でも初めての調査になります。
詳細な調査結果は、言論NPOウェブサイトで公開いたします。報道関係者の皆様には、この調査結果をぜひご報道いただきたく、お願い申し上げます。

日中関係に対しても米中対立が色濃く反映し、その傾向は中国に顕著にみられる
今回の世論調査でより明確になったのは、深刻化する米中対立が日中両国民の意識に大きな影響を与えていることです。両国民は、北東アジア地域の平和に不安を高め、台湾海峡での「軍事紛争の可能性」については、数年内か近い将来に軍事紛争が「起きる」と見ている日本国民は44.5%と半数に迫ったほか、中国国民では56.7%と6割近くになっています。
米中対立の影響で紛争の不安が高まる中で、中国国民に不戦や紛争回避や、そのための日中の取り組みを求める声がこの一年で急増していることも、今回調査のもう一つの特徴です。
今年は国交正常化の50周年ですが、50年目の現在の日中関係を「不満」だとする日本国民は43.9%、中国国民は50.5%もあり、両国民の半数近くが国交正常化後に締結した日中平和条約を「機能していない」と考えていることも明らかになりました。
なお、今回、初めての設問となったロシアのウクライナ侵略に対する是非では、ロシアのウクライナ侵攻に対して、中国国民で「反対」、あるいは「間違っている」と考えている人を合わせると半数を超えたことが明らかになっています。


【主なポイント】
「台湾海峡」での紛争の可能性を中国国民の約6割が意識
東アジアの紛争の可能性で、両国民が最も危険を意識しているのは、「台湾海峡」。日本国民は25%(昨年は13.4%)、中国国民は48.6%(同39.6%)で昨年から大幅に増加している。
特に「台湾海峡」で、軍事紛争を危惧する日本国民は44.5%と半数に迫っており、これに対して、中国国民は56.7%と半数を越えている。

中国国民もロシアは「間違っている」「反対」が半数超える
ロシアのウクライナ侵攻に対して、日本国民は「国連憲章や国際法に反する行動であり、反対」が73.2%で圧倒的だが、中国国民は、ロシアの侵攻を「間違っていない」が、39.5%で最も多い。
ただ、 中国国民でロシアの行動を「国連憲章や国際法に反する行動であり、反対」と考える人は21.5%もおり、さらに、「ロシアの行動は間違っているが、ロシアの事情を配慮すべき」が29%で、ロシアの行動を「間違っている」と判断する中国国民は50.6%と半数を越えている。

中国国民の対日認識や感情に見られる「米中対立」の影響
日中両国民の相手国に印象は、昨年よりもわずかに改善したが、日本人は87.3%と9割近くが依然、中国に「悪い」印象があり、中国人も62.6%と6割が日本に「悪い」印象を持っている。
中国人が日本に対して「悪い」印象を持つ理由では、「日本が米国と連携して中国を包囲している」が37.6%(昨年は23%)、「外交において米国に追随する行動が理解できない」が21.1%(同8.3%)と、この一年で軒並み増加している。

日中関係が重要なのはアジアの平和と安定で協力が必要だから
今回の調査で際立ったのは緊張が高まる中、中国国民に平和を求める声が急増している、こと。北東アジアの周辺国で合意すべき課題では、日中両国民で「平和共存」が最も多い。特に中国国民は「不戦」が今年は49.3%と、昨年の14%から大幅に増え、「非核」も34.9%と昨年の16.2から、「法の支配」も昨年の11.8%から20.7%と、それぞれ倍増した。

日中国交正常化50周年の節目だが、日中両国民の半数近くは「不満」
今年は日中国交正常化50周年だが、50周年後の今の日中関係を「満足する」日本国民は6.1%しかなく、43.9%が「不満」。中国国民は「満足する」が35.3%あるが、「不満」は50.5%と半数を越えている。
国交正常化の際に合意され、5年後に実現した日中間の平和友好条約について、両国民の半数近くが、「機能していないか、既に形がい化している」(日本48.2%、中国45.2%)と考えている。



■「第18回日中共同世論調査」概要
日本側の世論調査は、日本の18歳以上の男女を対象に2022年7月23日から8月14日まで訪問留置回収法により実施された。有効回収標本数は1000。最終学歴は中学校以下が5.5%、高校卒が42%、短大・高専卒が21.5%、大学卒が28%、大学院卒が1.2%である。年齢は20歳未満が2.3%、20~29歳が11.9%、30~39歳が14.8%、40~49歳が17.3%、50~59歳が14.7%、60~69歳が16.9%、70~79歳が22.1%。
中国側の世論調査は北京・上海・広州・成都・瀋陽・武漢・南京・西安・青島・鄭州の10都市で18歳以上の男女を対象に7月23日から9月30日にかけて調査員による面接聴取法により実施された。有効回収標本は1528。回答者の性別は男性51%、女性49%。年齢は20歳未満が2.4%、20~29歳が22.1%、30~39歳が21.5%、40~49歳が24.3%、50~59歳が14.3%、60~69歳が14.5%、70~79歳が0.8%。最終学歴は中学校以下が8%、高校・専門高校・短大・専門学校卒が22.4%、大学在学中が27.6%、大学卒が37.7%、ダブルディグリーが0.9%、大学院卒が3.4%である。

【言論NPOとは】
言論NPOは、「健全な社会には、当事者意識を持った議論や、未来に向かう真剣な議論の舞台が必要」との思いから、2001年に設立された、独立、中立、非営利のネットワーク型シンクタンクです。2005年に発足した「東京-北京フォーラム」は、日中間で唯一のハイレベル民間対話のプラットフォームとして15年間継続しています。また、2012年には、米国外交問題評議会が設立した世界25カ国のシンクタンク会議に日本から選出され、グローバルイシューに対する日本の意見を発信しています。この他、国内では毎年政権の実績評価の実施や選挙時の主要政党の公約評価、日本やアジアの民主主義のあり方を考える議論や、北東アジアの平和構築に向けた民間対話などに取り組んでいます。
また、2017年には世界10カ国のシンクタンクを東京に集め、東京を舞台に世界の課題に関する議論を行う「東京会議」を立ち上げ、会議での議論の内容をG7議長国と日本政府に提案する仕組みをつくり出しました。
さらに、米中対立下で、米国と中国が出席する4カ国の「アジア平和会議」を2020年1月に創設し、歴史的な作業に着手しています。

【中国国際伝播集団とは】
1949 年10 月に設立された。中国で最も歴史が古く、最も規模が大きい専門的な外国向け出版発行機関で、60年余りにわたり、多言語で国際社会に向けて中国の歴史や文明を紹介し、中国と世界の交流と理解、協力と友情を増進するために積極的で重要な役割を果たしてきた。出版社7 社と雑誌社5 社、チャイナネット、中国国際図書貿易グループ、対外伝播研究センター、翻訳資格審査評議センター、デジタルメディアセンターなど計20の組織を傘下に持つ。毎年40余りの言語で約5000 種の図書を刊行し、30 余りの言語の定期刊行物を180 以上の国・地域に届けている。
同時に30 余りの多言語ウェブサイトと100近いソーシャルメディアのプラットフォームを運営し、対外的で国際的な多言語、マルチメディアの新しい事業枠組みを作り上げている。2022年1月より中国国際伝播集団に名称変更。

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情報提供元: Dream News
記事名:「 ~言論NPOと中国国際伝播集団は「第18回日中共同世論調査」の結果を公表~ 「台湾海峡」「ウクライナ侵略」について中国国民の意識が世界初で明らかに