株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の自治体向けソリューション市場を調査し、市場概況や将来展望、自治体クラウドビジネスや主要ベンダー(サービス提供事業者)の動向などを明らかにいたしました。

1.市場概況
2019年度の国内自治体向けソリューション市場規模(事業者売上高ベース)は6,645億円で、前年度比103.9%であった。

政府は財政再建の一環として中央省庁や地方自治体、各種外郭団体を含めた行政システムの効率化、行政コストの抑制を目指している。この施策の一環として2009年から総務省主導で導入を行っているのが自治体クライドであり、自治体クライドとは協定を結んだ複数の自治体において外部のデータセンターでシステムを保有・管理し、ネットワーク経由で利用する取り組みである。

2019年度は引き続き自治体クラウド推進によるシステムの共同運用、システムのクラウド化が進展したことによる市場の縮小があったものの、Windows7のサポート終了にともなう特需で市場は拡大した。

2020年度はその反動による市場規模の縮小が見込まれるうえ、システムのクラウド化や共同運用化が進展し、投資の減少につながると考える。だが、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響による給付金支給や濃厚接触者の管理ツールなどの各種業務の発生と、政府が推進する自治体業務システムの標準化に向けた対応などを背景に、減少分を補う形となる。そのため、市場規模全体としては横ばいで推移し、2020年度の市場規模は6,440億円(前年度比96.9%)を見込む。

2.注目トピック~自治体業務システムの標準化に向けた検討が進展
総務省は、自治体間の業務システムが異なることによる重複投資をなくし、さらに自治体のデジタル化に向けた基盤を整備することを目的に、自治体の情報システムや様式・帳票の標準化を推進している。業務システム等を標準化することで、職員の業務負担の軽減や、コスト削減が期待され、住民サービスの向上にもつながる。住民基本台帳や納税、保険・福祉関連業務など、対象となる17業務における標準化の検討が行われており、2020年9月には住民記録システムの標準仕様が公開された。2021年度以降、システムの標準化仕様対応に向けた投資が進むとみるが、一部の自治体ではシステムの標準仕様が具体化されるまで、システム投資を控える可能性もある。

一方、業務システム標準化の進展により、ベンダー(サービス提供事業者)間においては価格競争が激しくなることから、基幹系などのシステム開発から撤退するベンダーがでてくることも想定される。現状でも多くのベンダーでは自社開発だけでなく、他社が開発したシステムの導入支援や販売業務まで事業領域を拡大し、収益を確保している。

3.将来展望
今後、自治体業務のデジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現、人手不足、働き方改革の機運の高まりなどを背景に、引き続き印刷業務を中心としたBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)サービスの利用は進展するものとみる。また、AI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automation)などの新たなITソリューションの利活用などに向けた投資が進むことが期待されるが、市場規模を押し上げるにはまだ時間がかかるものと考える。そのため、2021年度の市場規模は6,518億円(前年度比101.2%)を予測し、以降、2024年度まで市場規模は横ばいで推移するとみる。

ベンダー(サービス提供事業者)各社は、直近では業務システムの標準化に向けた対応に取り組んでいる。一方で、業務システムの標準化が進展した際には他社との差別化を図りづらくなるため、自社の特長を発揮すべく、操作性の向上や、顧客サポートなどの周辺サービス拡充に注力しているほか、AIやRPAなどの新たなITソリューションの提供の検討を進めている。

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調査要綱
1.調査期間: 2020年10月~11月
2.調査対象: ITベンダー、パッケージベンダー、全国の地方自治体等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談/Web面談、電子メール・電話によるヒアリング、アンケート調査、ならびに文献調査併用
4.発刊日:2020年11月30日

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情報提供元: Dream News
記事名:「 【矢野経済研究所プレスリリース】自治体向けソリューション市場に関する調査を実施(2020年) 2020年度の自治体向けソリューション市場は6,440億円の見込