三戸なつめ(左)と『乃木坂46』若月佑美(右)


 2018年11月30日でアイドルグループ『乃木坂46』から卒業することを自身の公式ブログで発表した若月佑美(24)と歌手でタレントの三戸なつめ(28)が、2018年11月18日(日)~11月25日(日)まで、東京・天王洲 銀河劇場で上演される舞台『鉄コン筋クリート』(演出:松崎史也)に挑む。


 同舞台は、1993年から94年にかけて『週刊ビッグコミックスピリッツ』に連載された松本大洋の同名漫画が原作。暴力が飛び交い、大人の思惑がうごめく街・宝町。混沌とした街の中で、お互いを補完し合い生き抜く2人の少年・シロとクロの姿を描く。2006年には二宮和也、蒼井優が声優を務め、アニメ映画化された。


 2人とも「大好きな作品」と思い入れも強く、クロ役の若月、シロ役の三戸とも、「原作を読んでいるときから好きなキャラクターで、自分の中にも(役と)同じ性格な部分がある」と、いう。「好き」ゆえに、原作では男性キャラを女性がどう演じていくのか、意気込みを聞いた。


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 ――この舞台の話をいただいたときの感想は?


 若月佑美(以下、若月) クロという人に自分がなれるんだという喜びもあったんですけど、その反面、自分が(原作もキャラクターも)好きだったので、自分がそれに値するのか緊張と不安はありました。でも、光栄すぎると思って、この不安な気持ちを押し殺して頑張んなきゃいけないと思いなおしました。


 三戸なつめ(以下、三戸) 自分も原作を読んでいて好きでした。特にシロが一番好きなキャラクターで、もし、実写化されるなら私がやりたいと思っていたので、お話をいただいた時にはうれしかったです。だから、若ちゃんみたいに、「私ができるかなぁ」とか、その時は全く思わなかったです。若ちゃんの話を聞いて「確かに」と思って、だんだん我に返ってきて、「プレッシャーあるかも。プレッシャー感じなきゃいけないわ」と、やっと思わせてくれました(笑)。



 ――三戸さんはシロが好きとのことですが、若月さんは、クロとシロどっちが好きでした?


 若月 結果的にクロになったんですけど、はじめのほうはシロが結構好きでした。可愛いし、ちょっと無邪気で言っていることも真っ直ぐで、自分もそう生きていたかったなぁと思うような、そんな無垢な存在でいいなぁと思っていたんです。でも、後半、クロがひとりだけになって、自分をちょっと見失いかけるところで、その葛藤が人間らしくて。どちらかというと、クロのほうが大人になった自分(若月)に共感しちゃって急にクロが好きになりました。


 ――自分の中ではクロとシロどっちが性格的に似ている部分があると思いますか?


 若月 (しばらく考えて)やっぱクロですね。三戸さんがシロすぎるんですよ。本当にまんまなんです。私もインタビューや殺陣を三戸さんと一緒にやらせていただいてるなかで、この真っ直ぐさはいただかないといけないと、思っています。とにかくカッコイイんです。シロもそういうカッコよさがあって、ぐるぐる考える前に真っ直ぐな発言をするところが、三戸さんはシロだなぁと思って見ています。自分はクロもそうなんですけど、実は、心の中で大人ぶっているけど、大人ぶれてない自分がいるというのは、クロに近いなぁと。


それと、どっちかというと、私は世話焼きタイプ。兄弟(姉と兄)の中では末っ子なんですけど、私がお姉ちゃんの荷物を持ったり、何か食べたいといったら、私が作って出していました。前半のクロはシロの面倒を見ていたりするので、そういうところは近いなと。クロもシロに対して、「自分がやれるようになりなよ」といいながら、やってあげる。私も「持ちなよ、自分で」といいつつ、持っちゃう。そういうところは似てるなと。ちっちゃいところですけど。


 ――三戸さんは、シロとクロどちらが自分に近いと思いますか?


 三戸 私はシロのほうが性格が似てると(笑)。思ったこといっちゃうし、ボーっとしているところも似ていると思うし、シロはよく変な歌をうたっているんですけど、私も鼻歌とか歌うし。


 若月 ぴったりだよね。


 ――自分の演じるキャラクターは、こんな性格だよ。こんなところを強調したいというのはありますか?


 若月 クロもシロもそうなんですけど、深すぎて、一言でこんな感じですと言い表しにくい存在ではあるんですけど、私がクロを見ててすごい好きだなと思う部分は、行き過ぎているかもしれないけど、誰かを守りたいという気持ちを強く持っているところです。その誰かはシロなんですけど、自分の町も守りたいと思っていて。自己犠牲してでも、自分がどれだけ身体的、精神的に傷ついてもシロのために、シロを守っていきたいと思っている姿はすごく好きだなと思います。一見、暴力的な部分だけを前面にしちゃうと、クロの良さは全然伝わらなくて、悪ガキで終わる。その暴力にも理由があって、ただ、狂気的に人を殴りたいから殴っているわけでもないというところを汲んでもらえるように、シロとの関係もきっちりと見せていければなぁと思っております。


 三戸 シロって素直で幼稚的なんですけど、自分の思っていることだったり、相手のことを信じる気持ちがシロはすごい強い子だなぁと思っています。あんなに毎日ケンカして、人を傷つけたり、傷ついたりしているけど、信じることを絶対やめない子だなぁと感じています。自分が演じるにあたっては、普段生きていて、人を疑うことはたくさんあると思うんですけど、この“鉄コン”の座組に関しては、私は自分のありのままを出して、自分が若ちゃんだったり、キャストの人のことを信じて、稽古に取り組んでいけたらいいなぁと。


『乃木坂46』若月佑美


クロ役の『乃木坂46』若月佑美


三戸なつめ


シロ役の三戸なつめ


 ――クロとシロは、驚異的な身体能力で街の中を飛び回ることが出来ますけど、驚異的な身体能力を何か一つ身に付けられるとしたら、何が欲しいですか?


 三戸 ジャンプ力は欲しいかもしれない。チビだから高く飛びたいですね。ジャンプして高い景色を観てみたいし、でかい人を見降ろしたい。スイーじゃなくてピョ~ンがいいんです。普通に飛ぶのはいいかな。シロとクロみたいに跳ねて、駆け回りたい。


 若月 驚異的に速く走りたい。足早いと利点しかないなぁと。誰かが忘れ物したとか、資料取ってくるとか、私が引き受けたら余裕じゃないですか。「やばーい、忘れ物した」って言ったら、「OK私が取ってくる」とか、「台本がいま向こうのスタジオに届いているらしいんですけど、取りに行けなくて……」って言う時に、「いきまーす」と、言ったら行けるし。


 三戸 人のためにしたいの?


 若月 あっ!結果的に!


 三戸 ええ子や(笑)


 ――アクションも魅せ場になると思いますが、いかがですか?


 三戸 舞台は4回目なんですけど、アクションははじめてです。気持ちと体が追い付かないです。気持ちは「オリャー」でも、体が重いから足が上がらない、自分が思っているよりワンテンポ遅いんです。


 若月 私もアクションは初めてなんです。過去に薙刀を使った舞台に出たことはあるんですけど、素手系はないです。いままでは、アイドルとして守られる役が多くて、自分で弓とか使って戦っていても、すぐヒーローが来て、「おまえは下がってろ」「そこで見てろ」と、言われることが多くて(笑)。薙刀の時は、ナンバ(※古来の日本人の走行法で、同じ側の手と足を一緒に出して歩く方法)でやるのが基本だったので、ナンバになってしまうんです。頭ではわかっているのに、足がそこに出ないのが悔しいですね。また、アクションさせてもらっていて悔しいのが、ちっちゃいところで女子っぽいしぐさが出てしまうところなんです。内股まではいかないんですけど、殴った後、気を抜いた時の着地の仕方が女子っぽかったり。足が内側に入るとか。そういうのが、もうちょっと意識的に改善していきたいなぁと思っています。



 ――それぞれ作品のPRをお願いいたします。


 若月 パラレルワールドじゃないですけど、不思議な世界観になっています。内容的にはメッセージ性があって、胸を打つ言葉もたくさん出てきますし、子供ならではの純粋な行動とか、そういうとこが大人になったいま自分も響きますし、観に来てくださる方も大人の方が多いと思うので、そういうところでは、昔を思い出したり、何かあらためて、自分の心に問うような作品になれるように頑張るので、ぜひ、観に来てほしいです。


 三戸 個人個人のキャラクターを、みんなどれぐらいの濃さで作り上げてきているのか、いまから楽しみで、本番になっていくと、みんなの作り上げてきたキャラクターが交じりあって、面白い世界観になるんじゃないかと思っています。原作ファンの方もいっぱい来てくれると思うんですけど、皆さんの好きなキャラクターがどんなふうになっているんだろう、どんな動きをするんだろうと楽しみにしていただけたらと思っています。


 ――ところで、若月さん、髪を短くしたのは、役柄ですか、それとも卒業のためですか?


 若月 結果的にそこがゴールであったので、切っちゃおうと思って切りました。いまのひとつ前にやっていたドラマの髪型がえらく独特だったので、このままだと収集つかないなぁと思っていたときに、このお仕事のお話をいただいたので、男の子役だったら、ウィッグか地毛かわからないけど、ショートにしてもいいなぁと。ずっとショートにしたかったので、今だと思って切りました。実は、ずっと昔から全く何も考えずに、卒業するときはショートにしようと思っていました。ビジュアル的にショートの自分で終わりたいと。一度だけ乃木坂46に入ってショートにした時があるんですけど、ショートのほうが私らしいと、その当時すごい言われて。お仕事でアニメのキャラクターぽく描いていただいた時も、実際はロングでしたがショートになっていたり。その時に、私ってそういう印象なんだなと思って、自分らしさを見せて終わりたいなぁと思って。一回目にショートにした時に、卒業する時ももう一度お仕事が大丈夫だったら、髪を切ってショートにして辞めようと思っていたので。


 ――ロングヘアだと、いかにも乃木坂46的なお淑やかなお嬢様っぽいけど、短いと宝塚っぽいよね(笑)。


 若月 顔が男顔なので、それがいいほうにいけばいいですけど。セットもせず、メイクもせずボーイッシュなかっこうをして歩いていると、たまに男の子に間違えられるので、そこは、最後までアイドルとして気を付けないといけないなぁと思っています。



 ――何で今、卒業しようと決めたんですか?


 若月 一番は、自分がもっと勉強したいと思う分野を見つけたことです。お芝居という場所を。アイドルになったときは、アイドルというものすら右も左もわからない状況だったので、経験を積んでこういう活動をするのがアイドルなんだ。こういう衣装を着て、こういうことをファンの人に届けるのがアイドルの仕事なんだということをたくさん学ばせていただいて7年半来ました。ようやく自分なりにアイドルというものがつかめてきたところで、またゼロから勉強したい、学びたい、知りたいと思ったのが、お芝居という分野だったので、私はこの意思がちゃんと強くあるタイミングで一歩踏み出そうと思って外に出ることを決めたんです。また、4期生が入ることが決定したのもありました。乃木坂46というグループにはまた新しい風も吹いて、やりきったかなと。卒業後は、舞台と映画と、ドラマとジャンル問わず、役も問わず挑戦していきたいですね。


 ――目指す俳優さんはいますか?


 若月 目標とする方はいないんですけど、自分の中で、安田顕さんの掛けてくださった言葉を励みにしています。安田顕さんと舞台でご一緒させていただいた時に、自分の夢が女優であると言ったときに、安田さんが、「おれはお前に売れて欲しい」と、言ってくださったのが嬉しくて。ふだん乃木坂46で集団でいるときは、「乃木坂さん(いま)きてますよね」「乃木坂さん売れてますよね」と、すごくありがたい言葉をいただいてうれしい反面、個人名ではないから劣等感というか、グループの名前の大きさと自分は合ってないんじゃないかと思うこともありました。そんな中で、安田さんのまっすぐに「売れろ」という言葉をかけてくださったのが衝撃で嬉しくて、その言葉を胸に持っています。自分はまだ全然売れてさえいないから、頑張っていこうと。思っています。


 舞台『鉄コン筋クリート』は11月18日(日)~25日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場で上演。


 公式サイト https://st-tekkon.net/


 





情報提供元: News Lounge