今春3月15日より、第2回新潟国際アニメーション映画祭が開幕。昨年、第1回映画祭は、世界で初の⻑編アニメーション中心の映画祭として、また多岐にわたるプログラムとアジア最大のアニメーション映画祭として、世界で大きな反響を呼びました。

今年は、⻑編コンペティション審査員⻑に世界的アニメーションスタジオ・カートゥーン・サルーンのノラ・トゥーミー氏を迎え、レトロスペクティブ部門では⻑編映画全作品ラインナップの高畑勲特集、イベント上映では今世界を舞台に活躍する湯浅政明監督の貴重な短編の特集上映、 『機動戦士ガンダム』シリーズの富野由悠季監督の来場が既に決定するなど、話題を呼んでいます。

この映画祭の魅力について、プログラム・ディレクターを務めたジャーナリストの数土直志さんにお話を伺いました!

――第2回新潟国際アニメーション映画祭がいよいよ開幕となりますが、第1回目の時はどの様な手応えを感じられていましたか?

僕が思った以上に反響がありました。特に業界の方から注目していただいて、映画祭の意義についても「こういうものが必要だったんだよ」と言った意見を言っていただけました。様々な作品の監督やプロデューサーたちも現地を訪れてくれて、観客の方との交流が出来たのでそういう意味でも成功だったと思っています。

――コンペティションのラインナップを見ていても、本当にバラエティ豊かですね!(https://niigata-iaff.net/programs/programs_category/feature-film-competition/)

例えばこれが10年前、あるいは15年前に長編特化のアニメーション映画祭をやると言ったら、おそらく成り立たちにくかったかなと思います。やったとしても、アメリカの作品と日本の作品、フランスといったヨーロッパの作品が中心で終わっていたのかなと想像します。それはインターナショナルではないので。現在は本当にレベルの高い作品が世界中から生まれているので、僕自身もとても楽しみです。

――全ての作品が注目だと思いますが、数土さんが特に注目しているものはありますか?

『マントラ・ウォーリアー ~8つの月の伝説~』というタイのアニメーションがコンペに入っていますが、新しさもありながらちょっと日本風な所もあるので多くの人に親しんでいただけるのではないかと思います。あとは、「世界の潮流」の中で『PIGSY』と言う台湾の長編アニメーションが入っており、アジアの作品の幅が広くて面白いなと感じています。

アジアのアニメシーンがすごく成長しているんですね。もちろん昔からアニメのスタジオはあったんですけれど、今は一次発信というか、オリジナル作品を自分たちで作れる時代になっていて。オリジナル作品が作られる環境になってからの最初の作品が今ちょうど世に出始めていて、タイでもマレーシアでもこんなに素晴らしい作品が作れるんだ!と、ちょっと驚くような作品が生まれているので、ぜひ注目していただきたいです。
今、中国のアニメーションが成長していることはよく知られているのですが、成長しているのは中国だけではないという。今回作品は無いのですが、韓国もそうですし、このアジアの急成長ぶりを世に紹介しないわけにはいかないなと。日本で映画祭をやる意義ということも含めて感じています。

――テーマ、作風、モチーフなど本当に多種多様ですよね。

コンペには入っていないのですが、「世界の潮流」で上映する『ニッツ・アイランド』というフランスの作品は、多分、大議論になると思うんですよ。実は「山形ドキュメンタリー映画祭」で1回上映されてはいるんですけれど、これは映画スタッフが人が殺し合うオンラインゲーム仮想空間を通じて様々なユーザーたちにロングインタビューを敢⾏し、プレイをする理由を語るその様⼦をゲーム映像のままドキュメンタリーとした作品なんですね。「なぜあなたはこのゲームに参加するんですか?」と言ったことを質問するのですが、ビジュアルはオンラインゲームなのでアニメーションに見えるんですよ。でも監督はドキュメンタリーとして撮っているので、これをアニメーションと呼んでいいのか、と。普通の映画祭だと多分コンペは難しいし、上映もどうなのかなと思うんですけど。「オタワ国際アニメーション映画祭」ではコンペに入っていたりもするのですが、日本でも上映したら面白いだろうなと思い、実験的にもプログラムに入れています。

この作品以外にも現在のアニメーションシーンでは実写を加工したり、ゲームエンジンを使ったものも登場していて、アニメーションの定義というものがすごく揺らいでいるなという気はします。ただ、そんな尖った作品も全て含めてコンペの選考をしたら、割とオーソドックスなものが揃ったということも面白いなと思っています。

――まさにこの映画祭でしか見られないであろう貴重な作品ですよね。一方の「レトロスペクティブ」では、高畑勲特集が組まれ、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』がイベント上映されるなど、日本のレジェンド作品たちもラインナップされています。

前回審査委員長と務めてくださった押井守監督とお話した時に、「日本でアニメーション映画祭をやるのであれば、スタジオジブリと富野由悠季監督を呼ぶべきだよね」と言ったことをおっしゃられていて。今回それが実現出来たことは本当にありがたいですね。

――私は個人的に『平成狸合戦ぽんぽこ』や『ホーホケキョ となりの山田くん』、『パンダコパンダ』が大スクリーンで観られるなんて最高だなと思いました。

高畑さんの作品の中でも、よく上映されるものとあまり上映されないもののがありますよね。ここまで初期の作品から『かぐや姫の物語』まで一気に観られるということは貴重だと思います。海外では『ホーホケキョ となりの山田くん』の評価がすごく高いんですよ。アメリカのニューヨーク近代美術館・MOMAがジブリの作品をコレクションとして所蔵しているのですが、1番最初に所蔵作品としたのは『ホーホケキョ となりの山田くん』なんですよね。高畑作品は今でもすごく評価されているんですけど、日本よりも海外、特にアニメーションを制作する関係者の間では圧倒的な評価なんですよね。

『ホーホケキョ となりの山田くん』(C)1999 いしいひさいち・畑事務所・Studio Ghibli・NHD

『かぐや姫の物語』(C)2013 畑事務所・Studio Ghibli・NDHDMTK

――『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の上映前トークショーには、富野由悠季さんと、出渕裕さん(メカニックデザイナー)というファン垂涎のお2人が登場されますね。

ロボットアニメって一般的にはなかなか映画祭で取り上げにくいジャンルなんですけども、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』は特に富野さんの作家性が現れている作品ですよね。映画祭にふさわしい作品であると思いますし、これが初見という若い方や子供達にも大きな感動を持ち帰ってもらえるのでは無いかと期待しています。

(C)創通・サンライズ

――旧作を大スクリーンで味わえることは、映画祭の醍醐味の一つですよね。

「湯浅政明とアニメーションの動き 短編特集」でも、見る機会の無い作品ばかりが揃っています。『なんちゃってバンパイヤン』は過去に数回しか上映されていないと思いますし、『スライム冒険記 ~海だ、イエー~』は25年前のVジャンプフェスティバルにて上映されたきりで、今回4半世紀ぶりにスクリーンにかかります。現在世界中で愛されている湯浅監督の源流とも言える作品を楽しんでいただきたいです。

『なんちゃってバイパイアン』(C)1999 Production I.G

その他にも『JUNK HEAD』の堀 貴秀監督、『クラヤカバ』の塚原重義監督など、インディーズ作家の中で注目を集める方もトークショーに登場してくれます。アニメーション業界を目指す若い方にとっても刺激になれば嬉しいです。

『クラユカバ』 (C)塚原重義/クラガリ映畫協會

新潟は、交通アクセスも良く、使いやすい施設もたくさんありますし、何よりもご飯が美味しく、人が温かい、映画祭にとってとても理想的な場所です。ぜひたくさんの作品に出会いに遊びに来ていただきたいです。

――今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!

【第2回新潟国際アニメーション映画祭】
英語表記:Niigata International Animation Film Festival 主催:新潟国際アニメーション映画祭実行委員会
企画制作:ユーロスペース+ジェンコ
会期:2024 年 3 月 15日(金)〜20日(水)
公式サイト:https://niaff.net [リンク]

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 「第2回新潟国際アニメーション映画祭」が3/15より開幕! プログラム・ディレクター数土直志さんに聞く「アジアの急成長ぶりに注目して」