ケリー・ライカート監督作『ファースト・カウ』が12月22日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国公開となります。現代アメリカ映画の最重要作家と評され、いま最も高い評価を受ける監督のひとりであるケリー・ライカート。『ファースト・カウ』は、お披露目されるやいなや絶賛の声が上がり、世界中の映画祭で157部門にノミネートされ27部門受賞。映画人からの評価も高く、ポン・ジュノ、ジム・ジャームッシュ、トッド・ヘインズ、濱口竜介ら、名だたる監督たちが口を揃えて本作を称賛。さらに、映画ファンに最も愛される配給会社A24とライカート監督の初タッグが実現し、自身の最高傑作との呼び声も高い本作が誕生しました。

物語の舞台は西部開拓時代のオレゴン州。アメリカン・ドリームを求めて未開の地にやってきた料理人のクッキーと中国人移民のキング・ルーは、ドーナツ作りを通して少しずつ友情を育んでいくー。

1994年のデビュー後から、“漂流するアメリカ”の姿を一貫したスタイルで鋭く描き続けるケリー・ライカート監督。そんな彼女の物語は、批評家のみならず世界の映画ファンの心をも強く掴み、確かな人気を獲得してきました。日本でも、2021年にケリー・ライカート監督の特集上映が行われ、その作品性の高さから瞬く間に口コミが広がり、異例の満席回が続出。デビューから長らく、紹介される機会が限られてきた知られざる名匠の登場は、日本の映画ファンを大いに驚かせ、彼女の名前を広く知らしめる衝撃的な出来事に。この度、そんなケリー・ライカート監督からインタビューが到着!本作『ファースト・カウ』の撮影秘話や、参考にした映画や絵画について、また撮影の技法や劇中の音楽まで…映画の裏側を語っています。

–『ファースト・カウ』の映像について、長年の撮影監督であるクリストファー・ブロヴェルトとどう考案しましたか?

クリスに会う前に、私の方で映像のガイドとなる本を作ります。シーンごとに、ルックやトーン、基本的な撮影戦略のアイデアについてまとめた、映画全体を捉えるためのものです。『ファースト・カウ』のために、私たちは溝口健二監督『雨月物語』やサタジット・レイ監督『オプー三部作』を見返しました。これらの映画は、ほったて小屋ばかりの小さな地区を舞台にした映画で、良い出発点となりました。またフレデリック・レミントンによるカウボーイの絵は、濁った青や緑、珊瑚色の光といった色彩の指針になっています。 クリスと私は一緒に、こうしたイメージ本を見ながら会話を始め、脚本を何度も読み返します。クリスはテストショットを行い、レンズを検討していきます。同時に、私たちはロケ地を探していきました。

私は撮影の前に、セットが出来上がった撮影現場で1人の時間をつくります。1人でファインダーを覗く時間は本当に重要です。そして実際の撮影当日、俳優たちと一緒にその空間で作業をし、その瞬間に漂う空気のようなものを調整して行きます。しかし、それまでにブロヴェルトと私で、とても頑丈な基礎をつくる作業をしているのです。

–『ファースト・カウ』では、カメラを地面からとても低い高さに置いています。ライカート監督の過去作『ミークス・カットオフ』と同じようなアスペクト比を使っていますが、映像空間はまったく違いますね。この映画の映像美はとても窮屈で親密で、実際のパノラマや風景ショットはありませんね。

“窮屈”とは可笑しいですね。クリストファー・キャロルは森を閉所恐怖症的だと感じています。確かに本作は、砂漠のプラヤで撮影された『ミークス・カットオフ』よりも閉鎖的です。『ミークス・カットオフ』は開放感と風景の広がりがすべてで、四角いフレームは、次に何が起こるかわからない、明日が見えないといった、不安を生み出すための手法でした。『ファースト・カウ』も4:3で撮影されています。掘ったり採ったりするシーンが多く、地面にたき火があれば、クッキーが寝るマットも地面近くにあります。正方形のフレームは、屋外の背の高い木々には効果的で、屋内ではとても親密な雰囲気になる。キャラクターにも合っています。4:3は、壮大ではなく、どちらかと言うと慎ましいフレームだと思います。

–ウィリアム・タイラーの音楽はとても雰囲気があり印象的ですね。物語の時代を超えたもの、あるいは別の時代のものにも聞こえる点で、かなり特異だと思います。

ウィリアム・タイラーは、私たちがあの時代の本物の音楽を使おうと色々試みた後に、参加しました。 本物に近づこうとすればするほど、公共放送のテレビ番組のように感じられたので、そこから抜け出したかったのです。ウィリアムが編集室にやってきて、ラフカットに合うか確認のために曲を流してくれ、それが上手くハマりました。

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『ファースト・カウ』
監督・脚本: ケリー・ライカート 脚本:ジョナサン・レイモンド 出演:ジョン・マガロ、オリオン・リー、トビー・ジョーンズ
2019年/アメリカ/英語/122分/スタンダード/カラー/ 5.1ch/原題:First Cow/日本語字幕:中沢志乃
配給:東京テアトル、ロングライド http://firstcow.jp/

<STORY>物語の舞台は西部開拓時代のオレゴン州。アメリカン・ドリームを求めて未開の地にやってきた料理人のクッキーと、中国人移民のキング・ルー。共に成功を夢見る2人は自然と意気投合し、やがてある大胆な計画を思いつく。それは、この地に初めてやってきた“富の象徴”である牛からミルクを盗み、ドーナツで一攫千金を狙うという、甘い甘いビジネスだったー!

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 現代アメリカ映画の最重要作家ケリー・ライカート監督のインタビューが到着 ドーナツで一攫千金を夢見る男たちの友情物語 『ファースト・カウ』