俳優の森田 想さんが主演を務めた映画、『わたしの見ている世界が全て』が現在、全国順次公開中です。

本作は、自分一人の力で生きてきたつもりの主人公・遥風(森田さん)が、母の死をきっかけに再会した兄弟との交流を通じて、大切なものに気づいていく物語。「個人の力で生きていくこと」がもてはやされる時代の中で、“失われつつある大事な心”を描いた社会風刺エンタテインメントとなっています。

監督は、TAMA NEW WAVE映画祭特別賞・主演男優賞などを受賞した池松壮亮主演の短編映画『家族の風景』や、小林直己(EXILE)主演短編ドラマ「アイの先にあるもの」を監督した新進気鋭の佐近圭太郎。

『東京バタフライ』に続く長編2作目となる本作で、2022年に開催されたスペイン・マドリード国際映画祭外国語映画部門にて主演女優賞、助演女優賞、脚本賞、ヘアメイク賞の4つの賞にノミネートされ、主演の森田さんが見事、主演女優賞を受賞する快挙を成し遂げました。森田さんにお話を聞きました。

■参考記事:水石亜飛夢インタビュー「夢を追っている人や、挫折を味わった人にも観てほしい」 映画『東京バタフライ』公開 [リンク]

■公式サイト:https://tokyonewcinema.com/works/wataseka/ [リンク]

●本作はマドリード国際映画祭で主演女優賞を受賞するなど、日本の家族の話ではあるものの、海外でも高い評価を得たことについて、どう受け止めていますか?

これは西東京の田舎というほどでもない小さな街の物語で、小さな家族の物語でもあるのですが、こうして海外で評価をいただけたことはとてもうれしいです。最近は日本の作品が海外の映画祭に出ていることが多いと思うので、そのチャンスを逃さなかったこともとてもうれしいです。

●演じられた熊野遥風は目的達成のためには手段を選ばないキャラクターで、「何かを成し遂げるためには犠牲が必要だ」とも言ってのける性格ですが、最初の印象はどうでしたか?

新しいなというよりは、どこかで見た聞いたようなことがある印象ではあるものの、あそこまで実行に移す人は、実際にいたらすごいなと思ったので、自分に置き換えて考えることは出来なかったですね。ある意味、自分の感情を大切にしている人をどういう風に演じたらいいのか、その演じ方を想像して楽しみではありました。

●完成した映画を観ていかがでしたか?

自分が想像していた作品といい意味で違って、時間も82分でとてもまとまっていますし、場面の切り替えや、物語が進んでいく様子などが遥風と同じように潔くて。登場人物と物語の進み方がリンクしているようにも感じたので、自分が関わらせていただいた映画なのですが、率直に面白いなと思いました。

●自分に置き換えて考える瞬間もありました。

作中の登場人物たちがすごく個性があって、キャラクターを通しながら見る社会の見方とか、観てくださる方が“どういう風に考えていたっけ?”とか、たとえば家族との距離感というものをどう考えていたっけと振り返りきっかけになってくれればうれしいです。

すごく刺激的な映画というよりは、日常の中にある感情や経験だったりをすくい取って描いているので、そこにぜひ注目して観ていただけたらいいなと思います。

●役柄の話に戻りますが、自分にはない要素を持っているキャラクターを演じる場合、たとえば何かを参考にすることはあったのでしょうか?

演じる前はそういうのは一切なくて、すべてが終わった後に「こういう人もいるのか」と分かったところはあります。キャラクターを演じてみたことで、彼女のような思考回路も分かるようになったという感じで、実際に誰かをモデルにして演じることは特にはなかったです。

●映画を観ていて、世の中のどこかにいそうなキャラクターだと思いました。

そうですよね(笑)。実在しているかのように演じたかったので、うれしいです。わたしの場合、「とにかくついてきて!」と他人に言えるほど自信はないので(笑)。風遥ではなくても強い人にあこがれることはわたしもあるので、リアリティーが出せていればよかったなと思います。

●最後になりますが、映画を観る方に向けて一言お願いいたします。

『わたしの見ている世界が全て』というタイトルがもう強いのですが、観ていただくと「そうだったのか!?」と問いかける内容にもなっていると思います。物語は家族の問題でありながら個々の人間のお話しでもあり、人の気持ちはどこまで察して考えるものなのか、自分が考えていることが正しいのかそうじゃないのか、普段意識をしていないと気付けないことが多いと思うので、そういうことをわたし自身が学べた作品でもありますし、みなさんにも同じように届けばいいなと思っています。

■ストーリー

熊野遥風は、家族と価値観が合わず、大学進学を機に実家を飛び出し、ベンチャー企業で活躍していた。しかし、目標達成のためには手段を選ばない性格が災いし、パワハラを理由に退職に追い込まれる。復讐心に燃える遥風は、自ら事業を立ち上げて見返そうとするが、資金の工面に苦戦。母の訃報をきっかけに実家に戻った遥風は、3兄弟に実家を売って現金化することを提案する。興味のない姉と、断固反対する兄と弟。野望に燃える遥風は、家族を実家から追い出すため、「家族自立化計画」を始める―。

(C) TOKYO NEW CINEMA

(執筆者: ときたたかし)

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 映画『わたしの見ている世界が全て』森⽥想インタビュー「わたし自身も学びが多かった作品」 “失われつつある大事な心”を描いた社会風刺エンタテインメント