映画『真実』のプロモーションで来日したジュリエット・ビノシュ&是枝裕和監督にインタビュー。昨年のカンヌ映画祭で日本映画21年ぶりの快挙となる最高賞“パルムドール”を受賞、『万引き家族』が興行収入46億を超えの大ヒットとなった是枝監督の長編14作目となる最新作は、舞台を日本からフランスに変え、世界を代表する豪華キャスト陣、そして国際的なクルーとともに新境地に至った初の国際共同製作映画だった。日本とフランスでは文化の差があれど、互いにいい影響を与えあったそうですが……。



■映画とは、魂を人に見せるための口実(ビノシュ)


●日本とフランスでは、映画に対するスタンスだけでなく、文化の違いが大きいとよく言いますが、監督にとって今回の体験はいかがでしたか? またビノシュさんは、今回参加していかがでしたか?


監督:もう二度と、日本以外の国で映画を撮るつもりはない、とは思ってなくて(笑)。もちろん、プロデューサーや通訳の方々が、僕がやりやすい環境を作ってくれたということは大きかったですし、長い時間をかけていろいろな話をしている関係性がベースにあっての今回の海外の作品だったので、そういう意味でもやりやすかった。だから今回みたいに毎回上手くいくとは思ってないけれど、またチャレンジしたい気持ちはあります。


ビノシュ:映画とは魂を人に見せるための口実で、そこからインスピレーションを得ることができるものよね。特にこの映画には異なる世代の人たちが人間模様を繰り広げるわけなので、その摩擦がわたしたちに刺激を与えてくれるの。それとマノン役のマノン・クラヴェルは、演劇畑の若い女優さんだけれど、わたしやカトリーヌ・ドヌーヴのようなベテラン、是枝監督に初めて対峙して映画に取り組み、その頑張る姿は感動的だったわ。



■楽しくて、調子に乗っちゃっただけなんです(是枝監督)


●資料によると8時間労働の土日休みなど、そもそもの時間が少ないということで、生みの苦しみもあったのではないでしょうか?


監督:いえ、日本と基本的には一緒ですよ。


ビノシュ:神経痛が大変そうでした(笑)。


監督:違います(笑)。腰ですね。腰を少々痛めまして……。ダンスのシーンを撮っている時に、みなさんがあまりにも楽しそうだったから、ちょっと僕も調子に乗ったんですよ。そしたら、僕はヘルニア気味なんですけど、ピキッっていっちゃった。で、そこから二週間、コルセットはめて。「お願いだから、僕のことを笑わせないで」と。大変だったことと言えばね、それくらいです(笑)。


ビノシュ:背中全体が神経痛かと思っていました(笑)。フランス人俳優とフランスでの撮影という重荷が、背中全体にのしかかったのよね! みんなが僕をいじめる、みたいなこと(笑)。


監督:楽しくて、調子に乗っちゃっただけなんですよ。本当に(笑)。


●撮影というか、心に余裕があった証拠ですよね。


監督:週末は休みで、ディナーの前に終わるので、楽しかったですよね。そういう意味だと考える時間はたっぷりあったから、そのぶん編集して台本を直す時間もたくさん取れたので、逆に迷惑かけましたけれど(笑)。


●たしかビノシュさんは、直前にセリフを渡してほしくないと?


監督:そうですね。約束しましたが、すぐ破りました。ほぼ直前でした

ね。月曜日の朝、配ることをしちゃいましたね。申し訳なかったです。


ビノシュ:これまでの経験で監督によっては、その日の朝や前日にかなり大きな変更をシナリオに加えてくる人がいて、それが困ってしまう理由は、わたしにとって演技とは言葉がセリフであることを忘れた状態になっていないといい演技ができないからなの。小さな変更ならまだしも、大きな変更の場合、監督がどれだけ損をしているかということなのよ(笑)。



■興味がそそられる、観る価値のある作品なの(ビノシュ)


●本作は是枝監督作品の初期のテイストを思わせる味わいもあり、ファンの間でも話題になりそうですよね。


ビノシュ:この映画の中に実在している人間関係に興味があるわ。これは家族の人間関係で三世代に渡る物語であり、それ以外に創造やフィクションも語られている。コメディーという形態を採っていながらも、その中には本物の根っこもあるの。対立を描きながらも、人間が変化していく進化していくために必要な対立で、そういう意味で普遍的な映画で、しかも日本人の是枝監督が初めてフランスという地で撮った。それは彼にとっても自分の根っこから離れた、言葉の通じないところでの経験だったわけで、そういう意味でも興味がそそられる、観る価値のある作品なの。


監督:映画の中では母と娘が娘と母に見えたり、昔の誰かと誰かの親子関係が見えたり、いろいろな見え方をするように重層的に作ったつもりでいるので、劇中劇も含め、注目して観ていただけると楽しめると思います。



■ストーリー

全ての始まりは、国民的大女優が出した【真実】という名の自伝本。出版祝いに集まった家族たちは、綴られなかった母と娘の<真実>をやがて知ることになる――。国民的大女優ファビエンヌが自伝本【真実】を出版。アメリカで脚本家として活躍する娘のリュミール、テレビ俳優の娘婿ハンク、ふたりの娘のシャルロット、ファビエンヌの現在のパートナーと元夫、そして長年の秘書……お祝いと称して、集まった家族の気がかりはただ1つ。「一体彼女はなにを綴ったのか?」そしてこの自伝は、次第に母と娘の間に隠された、愛憎渦巻く「真実」をも露わにしていき――。



映画『真実』

原案・監督・脚本・編集:是枝裕和 

出演:

カトリーヌ・ドヌーヴ『シェルブールの雨傘』

ジュリエット・ビノシュ『ポンヌフの恋人』

イーサン・ホーク『6才のボクが、大人になるまで。』

リュディヴィーヌ・サニエ『8人の女たち』 

配給:ギャガ 

(C) 2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

公式サイト:gaga.ne.jp/shinjitsu/


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(執筆者: ときたたかし) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか


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情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 是枝裕和監督「もう二度と日本以外の国で映画を撮るつもりはない……とは思ってない(笑)」